期間限定

数年前、夫が長期の出張に出ることになった。

当時は結婚して2年ほど。私の実家近くのアパートを借り、穏やかな日々を過ごしていたところだった。

私は当然のように夫が単身赴任すると思っていたのだが、なんと彼の両親の持ち家が近くにあり、2人で生活できるので一緒に来て欲しいとのことだった。

そこからあれよあれよと話がまとまり、結局私は見知らぬ土地に10ヶ月ほど滞在することに。

義両親もときどき来てくれるし、ここより圧倒的都会で楽しいこともいっぱいあるから、と言われたものの、正直前向きな気持ちにはなれず出発が近づくにつれ毎日不安で泣いていた。

それでも、こんな機会はきっともうないから期間限定の生活を悔いなく楽しもうと決め、なんだかんだ充実した日々を送り、無事我が家に戻ってきた。

 

そして今、再びその土地に赴く話が出ている。しかも今度は出張ではなく、完全移住。

夫の転職に伴い、そちらの地域へ引っ越す話がまとまりつつあるのだ。

以前は期間限定だからと頑張れたものの、定住となると事情は大きく変わってくる。

住み慣れた地元を離れるのが寂しい。

両親・家族と離れるのが寂しい。

祖母はいつまで元気でいてくれるだろう。

こだわり尽くしたマイホームを捨てたくない。

最高の環境で家庭菜園ができていたのに。

失うものがありすぎて、ただただ辛い。

しかもこの話が本格化したのはつい最近のこと。あまりにも急な展開に全く心が追いつけていないのが現状である。

 

私の実家はちょっとおかしいくらいに仲が良く、いまだに続けている家族行事がたくさんある。まさかこんなことになるとは思っていなかったから、去年だって、一つ一つのイベントを当たり前のように過ごしていた。適当に流していたわけじゃないし、楽しかったし、何か後悔があるわけでもないのだけれど。

それらをもう出来なくなってしまったことが、しかも突然そうなってしまったことが、すごく悲しくて寂しい。

 

出張に着いて行ったときは、いつも終わりを意識して過ごしていた。あと何ヶ月、あと何週間。最後には少し寂しさも感じるほどになっていた。

だけど、自宅に戻ってからはこの生活が終わるなんて意識は微塵もなかった。

家を買って、自分好みにリフォームして、最高の環境でおばあちゃんになるまで生活できると思っていた。本当にそう思い込んでいた。

期間限定なのはお菓子だけじゃないのだ。

 

ちょっと寂しい考え方かもしれないけれど、今あるすべてについて、この世にいる間の期間限定と思って大切に大切に、後悔のないように接していきたいと思った。終わりがこないものなんてないんだと思い知らされた今回、もし新しい生活が始まってもそのことを常に意識していたい。自分に関わってくれるすべてに感謝と尊敬の心を持って、満足して終わりを迎えられる生き方をしていきたいと思った。

(※例外として「愛はいつまでも絶えることはない」という言葉は信じています)