かつて白黒写真が主流だった時代。
私はこの時代の方々の写真を見るのが好きだった。
「男女とも、なんか凛々しくて格好いいな」
単純にそう思っていたのだ。

 

父方の祖父は早くに亡くなっており、私は会ったことがない。
知っているのは名前と、わずかなエピソードと、親戚の家に飾られている白黒の顔写真だけだ。
黒縁眼鏡をかけて、さらりと着物を着こなす祖父。自身の和服好きも相まってより魅力的に見える。あぁ、やっぱりこの時代の人はかっこいい。

 

当然のことながら、この祖父も戦争を経験している。
『祖父がある出来事においてもし判断を誤っていたら、父も私もこの世に存在していなかった』
という話は数年前に父から聞いた。
学校の授業で教わるのとはわけが違った。
言葉が出なかった。

 

それ以降、白黒写真の人物に対する私の考えはガラリと変わった。

「だからこその、この顔つきなんだ。」

何もわからず、何も考えず、ただ凛としていて素敵だな、と思ってしまっていたことを心から反省した。

 

 

その上で、やっぱり私はこの時代の方々の顔が好きだなと今も思っている。
現代人の私が持っていない何かを、彼ら彼女らから感じるからだ。それが何か、と問われるとまだ分からないが。


もしも私が、今日を昨日より一生懸命に過ごしたら。
もしも私が、明日一日を今日よりも真剣に生きてみたら。
明後日の私の顔は、ほんのわずかでもこの方々に近づけるだろうか。


いつか祖父に会えたとき、祖父は私の顔を見てどんなことを思うだろう。

「これは自分の孫で間違いない」
と喜んでもらえるような、誇りに思ってもらえるような、そんな顔になっているだろうか。


今日を全力で生きよう。まずはそこからだ。